2018年11月9日
一般社団法人建設電気技術協会
株式会社日立国際電気
株式会社拓和
一般社団法人建設電気技術協会では、i−Construction推進コンソーシアム 技術開発・導入WGで公募された「洪水時の浸水エリアや水害規模を把握、配信する技術」(以下、「本技術」という。)に株式会社日立国際電気、株式会社拓和と共同で応募し、選定されました。
本技術を実現するため、浸水・水害に備えるセンサネットワークシステム(以下、「本システム」という。)を用いて、9月18日〜11月9日の間、中国地方整備局太田川河川事務所管内の太田川水系古川の現場にて実証実験を行いました。
実証実験では、簡易な浸水センサを樋門堤内側に設置し、降雨時における水位の変動データを1分間隔でLPWA(Low Power Wide Area)無線を用いてクラウドサーバに収集し、簡易画面を作成してインターネット回線経由で取得データをWEB公開する事に加え、収集した浸水データと国土交通省の河川情報システムで提供されている水位データとを比較検証し、本システムの動作の有効性を確認しました。
併せて、LPWA無線回線における通信エリアを確認するため、電波伝搬試験を行いました。
電波伝搬試験では、古川2号排水樋門に設置した受信装置から最大で半径1.2km離れた地点の送信装置から電波の実測及び机上計算とで検証を行い、通信可能で有る事が確認できました。
本結果を踏まえ、簡易な浸水センサとLPWA無線で構成する計測端末を堤内地側へ面的に設置する事により内水及び外水氾濫発生時の規模把握及び情報配信が可能と考えます。
昨今、ゲリラ豪雨等が急増し、各地で水害が多発しております。今後、浸水・水害による被害軽減のために本システムが活用されますよう実用化に向けて改良を進めてまいります。
図1.センサ据付け箇所及び堤内エリア確認場所相関図
出典:Geospatial Information Authority of Japan
「(国土地理院の地理院地図(電子国土Web)『広島市付近』掲載)」
●計測データ収集装置(受信装置)・・・古川2号排水樋門
●計測端末(送信装置)・・・古川1号排水樋門、古川5号排水樋門、古川7号排水樋門
図2.受信装置
(古川2号排水樋門)
図3.送信装置
(古川1号.5号.7号.各排水樋門堤内側)
図4.本システム取得データと国土交通省河川情報システムデータとの相関グラフ
(国土交通省河川情報システムデータ(出典:国土交通省 川の防災情報 観測所:古川))
降雨時の国土交通省河川情報システムデータにおける河川水位上昇下降に伴い、本システム取得データにおいても同様のデータが確認された。
これは、排水樋門における浸水センサデータが河川水位の上昇下降と連動し、適切かつ遅延が少なく収集されている事を示している。
図5.堤内地より古川2号排水樋門設置の受信設備取得受信電力及び机上計算値
図1に示す堤内地において、上記14ポイント各々でLPWA送信機を地上に置いた状態で送信を行い、古川2号排水樋門設置の受信設備にて受信電力の測定を行った結果、LPWAの受信感度レベルである-132dBm(SF10)を全ての地点で上回っていた。
さらに2波モデルを用いた机上計算レベルとの比較においては、地形や構造物による遮蔽として、25dB程度の損失を見込む必要があることが分かった。
本取得データにより、送信機器を高所に設置した場合は、更に広範囲な浸水センシングエリアの確保が可能と思われる。