2017年10月18日
株式会社日立国際電気
国立大学法人 京都大学
株式会社日立国際電気(以下「日立国際電気」、代表執行役 執行役社長 : 佐久間 嘉一郎)と京都大学大学院情報学研究科(以下「京都大学」)原田 博司教授の研究グループは、このたび“モノ”のインターネット(Internet of Things: IoT)データ収集・制御用広域系Wi-RANシステム用無線機(以下、本装置)による無線多段中継伝送を用い、3段・分岐有という構成で総中継距離75.0km、単区間最大距離27.8kmでの5拠点同時中継データ伝送試験に成功しました。
さらに、上記Wi-RAN同時中継回線を用いて、Wi-SUN無線機を用いた無線ネットワークにより血圧・脈拍等の生体計測データを取得する医療データ収集システムと、災害時における被災現場の情報収集としての防災・減災危機管理システムとの異システム同時運用試験に成功しました。
長距離の多段中継回線を容易に構築するために、無線機の電源投入のみで、自動的に通信可能な無線機をセンシングし接続していくことにより、順次中継エリアを拡大していく、詳細設定不要な自動多段中継ネットワーク構築機能を開発しました。 さらに実際に想定されるアプリケーションで十分に利用できることを確認しました。
今回の試験結果を受け、実システムにおけるWi-RANマルチホップを利用したIoTシステムの普及促進が期待されます。
【本研究成果のポイント】
【研究の内容】
今回、電源投入のみで、無線機(図1)が自動的にセンシングすることにより周囲の通信相手となり得る無線機を探し接続していくことで、中継エリアを拡大していく、詳細設定不要な自動多段中継ネットワーク構築機能を開発しました。
また、センシングによって得られた周囲無線機の統計情報を上位に伝達していくことで、スケジューラおよび回線監視サーバにおいて接続している全無線機の状態を一元管理することが可能となるシステムの構築を行いました。
本試験では、遠隔からの医療情報の伝送及び災害時の緊急臨時インフラ構築を想定しており、情報収集本部として基地局を京都大学に、第一中継局は長距離無線通信環境の確保という観点から近隣で最も高台である比叡山に、第二中継局は遠隔医療時の中継点及び災害時の避難所を想定し琵琶湖南部湖畔(滋賀県草津市下寺町)に、第三中継局はさらにエリアを拡大するという目的で琵琶湖西側の高台に位置するびわ湖バレイに、第四中継局は遠隔医療時の中継点及び災害時の避難所を想定し琵琶湖中央部湖畔(滋賀県近江八幡市沖島町)に設置しました。 また、高台である比叡山に中継局を設置したときの最大伝送距離を検証するために第五中継局を比叡山から27.8km離れた京田辺市(京都府京田辺市薪西山)に設置しました(図2)。 各中継局においては、ホイップアンテナ、ブラウンアンテナという位置合わせが必要なく、広い設置場所も必要ない、簡便なアンテナを採用しました。 設置完了後、すべての無線機の電源を入れたところ、自動的に図2右下のような形態のネットワーク構成(中継段数3、分岐有、総中継距離75.0km、総直列中継距離(基地局-第一中継局-第二中継局-第三中継局-第四中継局)47.2km、単区間最大距離27.8km)となるWi-RAN中継回線の構築に成功しました。
また、構築したWi-RAN中継回線を用いて末端の第四中継局から映像伝送を行うと同時に、医療データ収集システム及び防災・減災危機管理システムと連動させ、他の4拠点からのデータを収集する伝送試験に成功しました。
項目 | 仕様 | |
---|---|---|
通信方式 | OFDMA/TDD | |
変調方式 | 下り(DL) | QPSK、16QAM、64QAM |
上り(UL) | QPSK、16QAM、64QAM | |
ダイバシチ受信 | 最大比合成方式(2ブランチ) | |
送信出力 | 5W / 1W | |
外形寸法 | 5W | 240(W)×300(H)×180(D) mm |
1W | 210(W)×90(H)×200(D)mm | |
質量 | 5W | 8kg以下 |
1W | 3kg以下 |
図1.マルチホップ中継方式のファームウェアを搭載した無線機と仕様
図2.広域データ伝送試験における無線局設置場所
出典:Geospatial Information Authority of Japan
「(国土地理院の地理院地図(電子国土Web)『京都市付近』掲載)」
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